INTERVIEW

NPO法人 武尊根BASE

廃校とその校庭を活用したキャンプ場を中心に
さまざまなアウトドア・農業体験や交流が広がっていく。

森に囲まれた廃校を活用して交流拠点に

「武尊根BASEは、交流拠点です。県外から訪れる人、地域の人を問わず、人の輪を結ぶ着火点のような存在でありたいと思っています」
 こう語るのは、NPO法人武尊根BASEの理事長を務める小石俊一さん。
 森に囲まれ、白塗りの壁に赤い屋根の木造りの、懐かしい雰囲気の漂う廃校舎が武尊根BASE。都心から約2時間、最高のロケーションが迎えてくれます。
 小石さんは、「農業者の高齢化や耕作放棄地が増え続ける片品地域をなんとか盛り上げたい」と、2014年に廃業した土産物店を拠点とし、片品未来振興協議会を立ち上げ、仲間たちと地域の活性化策について検討を始めました。
「ちょうどそのころ、片品村では村内の4つの小学校を1か所に統廃合することが決まったのです。私はひと足早く地域の盛り上げ方を追求していたこともあり、2016年にNPO法人武尊根BASEとしてスタートし、交流拠点として校舎を活用することとなりました」

小石俊一理事長

廃校舎と校庭を活用したキャンプ場が人気

 核となるキャンプ場は、農林水産省の農泊推進対策事業の助成金を受けてスタートしました。校庭を取り囲むように14区画が用意されています。木造校舎に抱かれた立地でのキャンプは、大人にとっては懐かしく、子どもたちにとっては新鮮なもの。校舎内は自由に見学でき、ピアノや木琴に触れることもできます。
 調理は、屋外の洗い場に加え、ランチルームのキッチンを利用することも可能です。「食材は近くにある道の駅『尾瀬かたしな』の農産物直売所などで手に入れることもできますよ。尾瀬トマトやエダマメ、トウモロコシなどが地域の特産で、武尊根BASEでもこれらの野菜販売コーナーがありますから、運が良ければ入手可能です」
 シャワーは設置されていませんが、キャンプ利用客には自動車で5分ほどの温泉、「花の駅・片品 花咲の湯」がお得に利用できます。「ほとんどのお客さまが、花咲の湯を利用しているようですね。四季折々の大自然に囲まれた露天風呂でさっぱりできます」

テントサウナや雪上キャンプも

 グランピングも2区画で可能で、キャンプ用のテントや調理用具、寝具などのレンタルも豊富に用意され、サウナ用具のレンタルもあるので、要注目です。「2022年冬からオールシーズン開設としました。首都圏を中心に人気を集め、雪上キャンプに挑戦する人も増えていますね」
 コロナ禍はさまざまな業界に大きな影響を与えたが、3密を避けながら自然を満喫できるキャンプ場は人気が高まりました。
「コロナ禍で、改めて屋外でのキャンプの良さが見直され、家族連れや大学生同士のグループなど、廃校の校庭での時間をゆったりと楽しんでいるようです。キャンプ初心者から手慣れたベテランまで、幅広い人たちが訪れます」

農業体験やアウトドア、さくら祭りなど多彩な楽しみ方

「希望者には、私が受け入れ農家を紹介しています。地域の農家さんと一緒に多彩な農業体験と収穫体験をどうぞ。毎年夏にはキャンプや農業体験を組み合わせて訪れる都市部の学童・学校もあり、私がコーディネートしています」
 尾瀬のふもとの郷として里山の魅力にあふれ、農業体験のほかに、アウトドアとしても、周辺ではスキー・スノーボードはもちろん、サップやカヌー、ラフティング、トレッキング、マウンテンバイク、スノーシューなど、多彩な楽しみ方があるのが片品の魅力です。また、武尊根BASEでは、訪れる人と地域の人たちとの交流も喜びの一つと言えるでしょう。「希望者には提携宿泊先の紹介も可能ですし、キャップをベースに楽しみ方は大きくひろがっていきます」と小石理事長は語っています。
「コロナ禍以前は、校庭を囲むように咲き誇る桜の開花期(4月下旬)に合わせて行う『武尊根さくら祭り』が大人気で、地元の人、キャンパーなど500人ほどが集まっていました」
 さくら祭りには、校庭には地元の人たちが出店し、ワークショップ、子どもたちのダンスなど、満開の桜の下でにぎわいます。

自然の中で成長できる保育施設も運営

「キャンパーを迎え入れる観光スポットとしての表情に加え、地域の人たちの交流スペースとしての一面もあり、健康体操教室や機織り教室、木琴教室など、世代を超えた活動の舞台ともなっていることも武尊根BASEの大きな特色と言えるでしょう」
 また、武尊根BASEは、この廃校を利用して野外での活動を特色とする「さんさん森のようちえん」を運営。森遊びや川遊び、雪遊びなど、春夏秋冬、子どもたちは先生とともにさまざまな自然とのふれあい、遊びに挑戦しています。
「惜しまれながらも廃校となった学校には、毎日、子どもたちの元気な声が響きわたり、地域の人たちにとっても元気の源となっているようですね」と小石理事長は感じています。子どもにとっては、生き生きと楽しめる遊びが満載されたフィールドだけに、県内外から訪れるキャンパーにとってもとことん楽しめる空間と言えるでしょう。
「キャンプや交流イベント、そして幼稚園にしても、多くの人が訪れ、にぎやかに響く声を感じられることが、武尊根BASEの活動を通してのやりがいです」

山の可能性を追求する拠点としての武尊根BASE

「埋もれている地域の魅力を、もっと引き出していきたいですね。いろいろな切り口や可能性があると思っています。武尊根BASEは、それらを見つけ、次の世代につなげていきたい」
 こう語る小石さんが構想しているのは、片品村を国際的な山岳リゾートとし、武尊根BASEをそのため山岳アカデミーにするという壮大な目標です。「片品の山々については、尾瀬のみに脚光が当たっていますが、武尊山をはじめ利根方面まで含めれば、ヨーロッパにも負けない実に魅力的な山々が連なっています。ここを舞台にした山岳レースの取り組みも始まりました。さまざまな山岳レジャー・スポーツの一大拠点にするのが私の夢」と小石さん。
 片品の雄大な山々、そして麓に広がるのどかな農村風景。これらが相まって、魅力的な山岳リゾートとなる可能性を秘めている片品。
「武尊根BASEを拠点として、雄大な自然にあふれた片品をアクティブに楽しみ尽くすようになってほしい」

(取材日:令和4年11月)

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