INTERVIEW

農家民宿 亀久保ゆっこ

自然と食の大切さに触れる豊かな時間
観光農園ではない実際の農家ならではのおもてなし

豊かな自然と満天の星空が魅力の高山村で
収穫・農業体験を提供する1日1組限定の農家民宿

 群馬県の北西部に位置し、小野子山、中ノ岳、十二ヶ岳など、1,000メートル級の山々に囲まれた高山村。県立ぐんま天文台の設立を機に美しい星空を守るための「光環境条例」が制定されるなど、星空が美しいことでも有名です。
 そんな、豊かな自然と満天の星空が自慢の人口約3,000人の小さな村に、農業体験を主とした1日1組限定の「農家民宿 亀久保ゆっこ」があります。季節に合わせた野菜の収穫体験や農業体験をはじめ、自分たちで収穫した野菜や農家でつくる旬の野菜を使用した田舎料理が楽しめると評判で、小さな子どものいるご家族から学生さん同士まで、多くの方に利用されています。

「農家民宿 亀久保ゆっこ」の外観

民宿2階から見える、高山村の展望

「高山村のどこが好きですか?」
県外から訪れた若者からのひとことがきっかけ

 元は高山村役場の職員だった松井ゆき子さん。長年勤めた役場を55歳で早期退職し、翌年の平成25年3月、自宅敷地内に2階建ての民宿をオープン。そのきっかけは高山村を訪れた若者のひとことでした。
 「役場の地域振興課に勤務していたころ、『みどりのふるさと協力隊』という事業を通して、若者2人を一年間、我が家で預かりました。その2人から『高山村のどこが好きですか?』って、最初に聞かれたんです。この村で生まれ育った私は、どこが好きかなんて考えたことがなくて、質問に即答できなかったんです……」。
 以来、ゆき子さんは高山村について考えるようになったそうです。
 「今まで気づけなかった良さをたくさん発見しました。この村の魅力をもっと多くの人に知ってもらいたい、そう思うようになりました。彼女たちとの出会いが人生の転機でしたね」と、ゆき子さんは当時を振り返ります。

「農家民宿 亀久保ゆっこ」を営む、松井ゆき子さん

季節に合わせた収穫体験・農業体験で
高山村の四季折々の魅力に触れる

 「農家民宿 亀久保ゆっこ」では、寒さが厳しくなる冬期を除いて、季節に合わせた収穫体験や農業体験を提供しています。
 4月~5月中旬の春には、タラの芽やワラビ、ふきのとうなどの山菜採り、かき菜やからし菜、小松菜など季節野菜の収穫、他にも各種野菜の種まき・苗植えなどを行います。6月下旬~9月中旬の夏は、枝豆やトウモロコシ、ナス、キュウリ、トマトといった季節野菜の収穫体験が中心です。10月~12月の秋には、大根や白菜、さつまいも、長芋など季節野菜の収穫、稲刈り、他にもコンニャク掘りからコンニャク作り体験までを行います。
季節で楽しみ方が異なる高山村の豊かな自然。おすすめの時季をゆき子さんに聞くと 
 「どの季節も良いけど、中でも夏かな。夏は昼夜の寒暖差がおいしい野菜を育てます。採れたての夏野菜のおいしさは格別ですよ」と話します。

野菜の苗植え体験

収穫した色とりどりの新鮮野菜

自分で採った野菜を調理して味わう喜び
自然に癒され、食の大切さを実感

 季節に合わせた収穫体験や農業体験に加え、採れたての野菜を使った料理体験ができるのもここならではです。
 「スーパーに行けば調理したものが簡単に手に入りますが、もっと時間をかけて楽しんでほしい。それによって素材のおいしさや食の大切さを感じてもらえたらうれしいですね」と、農家に生まれ・農家に嫁いだ、ゆき子さんは話します。その言葉通り、ここではみんなで料理をつくり、それを味わう時間も楽しめます。
 特に好評なのが、薪を燃やして羽釜で炊いたご飯や、自分で練って発酵させた生地と収穫した野菜でつくるピザ、手打ちうどんと収穫した野菜の天ぷら、コンニャクづくりなど。料理のメニューは、事前の予約時に相談できます。

庭のピザ釜で焼く本格的な「手作りピザ」

穫りたての野菜の甘みが引き立つ「天ぷら」

お客様とのコミュニケーションの時間を大切に
ここでの出会いは私のたからもの

 ここの魅力は、ゆき子さんの温かな人柄もそのひとつ。地元の人はもちろん、お客様からも「ゆっこさん」、「ゆっこちゃん」の愛称で呼ばれるほどです。民宿の1階にある居間には、お客様から届いた手紙や似顔絵が大切に飾られています。
 「これまで利用した方が、後日、手紙や似顔絵を描いて送ってくれるんです。本当にうれしいですね。中には、一緒にピザづくりをしたご家族から、丈夫な長い革の手袋が送られてきたことがありました。私が短い手袋でピザ窯を利用しているのを気にかけて『ゆっこさんが熱そうだったので使ってください』って、手紙が添えられていました。どれも大切な宝物ですね」と、まるで遠くで暮らす家族を思うように優しい笑顔でゆっこさんは話します。

お客様から届いた手紙や似顔絵

優しい笑顔で話すゆき子さん

無理はせず、それでも少し背伸びをして
お客様に喜んでいただける体験や空間、時間を提供

 お客様との触れ合いを通して、高山村の魅力を再発見しているゆき子さん。改めて『高山村の好きなところ』を聞いてみました。
 「空気がおいしいところかな。あと、夜の暗闇もいいもんですよ。星を観賞したり、蛍を観賞したりね。……実は、以前まで『何もない村』だと思っていて、お客様にも『(都会に比べたら)何もないでしょ(笑)』って、言ったことがあるんです。そしたら『何にもなくないですよ。こんなにありますよ!』って。以来、星空を見上げることが増えましたね」。
 さらに、今後の目標について、「私のモットーは無理をしないこと。でもほんの少しの背伸びはしていきたい。これからも『ここに来て良かった!』と感じていただける時間を提供したいです」と話します。
 高山村の美しい自然、温かなゆき子さん、そして看板犬のこむぎちゃんが、訪れる人をきっと笑顔にしてくれるはずです。

夜の暗闇にも魅力がいっぱい

看板犬のこむぎちゃん

(取材日:令和5年9月)

「農家民宿 亀久保ゆっこ」について

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